診療案内睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群（SAS）とは？

睡眠時無呼吸症候群（Sleep Apnea Syndrome; SAS）は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりすることで、体の低酸素状態が発生する病気です。医学的には、10秒以上息が止まる状態を「無呼吸」といい、平均して1時間に5回以上、睡眠中に無呼吸または低呼吸が見られる場合にこの疾患と診断されます。この呼吸が止まったり浅くなったりする回数は無呼吸低呼吸指数（AHI）と呼ばれ、診断や重症度の判定に用いられております。

この病気は、空気の通り道（上気道）が狭くなることが原因で発生する閉塞型睡眠時無呼吸（OSA）、呼吸を調整する脳の働きが低下するために発生いたします中枢型睡眠時無呼吸（CSA）、これら両方が関係する混合型に分けられます。その大部分は閉塞型が占めております。

日本における睡眠時無呼吸症候群（SAS）の患者さんは推定300万人以上から約500万人とされておりますが、
適切に診断・治療を受けていらっしゃるのは一部に過ぎないとも言われております。

この病気は、適切な検査と治療によって症状の改善や合併症の予防が期待できるため、
周りの方にいびきや睡眠中の無呼吸を指摘された場合には、お早めに専門医療機関を受診されることをおすすめいたします。
睡眠時無呼吸症候群の診断（簡易検査）と治療相談を行っております。

睡眠時無呼吸症候群（SAS）の症状

これらに当てはまる方は睡眠時無呼吸症候群（SAS）の可能性があります。一度、青栁クリニックにご相談ください。

● ✓ 周囲の方から大きないびきを指摘される
● ✓ 寝ているときに呼吸が止まっていると言われる
● ✓ 夜間の睡眠中によく目が覚める、息苦しさで目覚めることが多い
● ✓ 寝ているはずなのに熟睡感がなく、朝スッキリ起きられない
● ✓ 起床時に頭痛や体のだるさ、倦怠感がある
● ✓ 日中に強い眠気を感じる（会議中、作業中など）
● ✓ 運転中や単調な作業中に強い眠気を感じてしまうことがある

睡眠時無呼吸症候群は、ご自身では気づきにくいことが多く、ご家族やパートナーからのいびきや無呼吸の指摘をきっかけに医療機関を受診され、検査を経て発見されるケースが多数ございます。

また、大きないびきや無呼吸といった典型的な症状以外に、日中の過度な眠気や倦怠感のみを自覚される場合もございます。これらの症状は日常生活の質を大きく低下させるため、注意が必要です。

睡眠時無呼吸症候群（SAS）の原因

睡眠時無呼吸症候群（SAS）の主な原因は、そのタイプによって異なります。

● 閉塞性睡眠時無呼吸症候群（OSAS）：睡眠中に喉（上気道）が一時的に狭くなる、あるいは完全に塞がってしまうことが原因で発生いたします。主な要因としては、
- ○ 肥満（首周りや喉への脂肪沈着）
- ○ 扁桃腺やアデノイドの肥大
- ○ 顎が小さい、下顎が後退しているといった骨格的な特徴
- ○ 舌が大きい（舌根沈下）
- ○ 加齢による筋力の低下
- ○ アルコール摂取や睡眠薬の使用（筋肉を弛緩させるため）などが挙げられます。
● 中枢性睡眠時無呼吸症候群（CSAS）：脳の呼吸中枢（呼吸をコントロールする部位）から、呼吸筋への指令が適切に出なくなる、あるいは呼吸のシグナルが弱まることで発生いたします。心不全や脳卒中といった心血管系・脳血管系の疾患をお持ちの方に比較的よく見られます。その他、神経変性疾患、頚椎症、特定の薬剤の影響なども原因となり得ます。

青栁クリニックでは、問診や診察を通じて、患者様それぞれの原因を考慮した上で、適切な検査や治療方針をご提案いたします。

睡眠時無呼吸症候群（SAS）の合併症とリスク

睡眠時無呼吸症候群（SAS）を放置しておかれますと、睡眠中の繰り返す低酸素状態や、頻繁な覚醒による睡眠の質の低下、交感神経の亢進などが体に大きなストレスを与え、様々な合併症を引き起こす危険性が高まります。

● 高血圧
● 脳卒中（脳梗塞・脳出血）
● 心筋梗塞、狭心症などの虚血性心疾患
● 糖尿病（インスリン抵抗性の増大など）
● 脂質異常症（高脂血症）
● 不整脈（特に心房細動など）
● 心不全

これらの循環器系疾患や生活習慣病は、SASによって発症リスクが高まるだけでなく、SASが存在することで既存の疾患が悪化する可能性もございます。重篤な場合には、突然死に至る患者さんもおられます。

特に、AHI（1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数）が20回以上の中等症から重症のSAS患者さんについては、これらの合併症のリスクが著しく高まるため、早期からの積極的な治療介入が強く推奨されます。

さらに、日中の強い眠気は、集中力や判断力の低下を招き、自動車の運転中の居眠り事故や、職場での労働災害など、様々な事故につながる可能性があり、社会生活にも大きな影響を及ぼすことがございます。

その他にも、慢性的な睡眠不足により、日中の抑うつ気分や意欲低下、記憶力の低下が見られたり、動脈硬化が進行したり、認知症のリスクが上昇したり、うつ病を合併したりするなど、心身に多岐にわたる悪影響を及ぼします。近年では、いびきだけでも動脈硬化のリスクを高める可能性も指摘されております。

睡眠時無呼吸症候群（SAS）を正確に診断し、必要に応じて適切な治療を行うことは、これらのリスクを軽減し、健康寿命を延ばす上で極めて重要になります。

睡眠時無呼吸症候群（SAS）の検査｜青栁クリニックでの対応

睡眠時無呼吸症候群（SAS）の診断は、睡眠中に実際に無呼吸や低呼吸が存在し、それに伴って体内の酸素レベルが低下していることを客観的に証明することによって行われます。また、SASの重症度（AHIに基づく）を正確に把握することも、適切な治療法を選択する上で重要となります。

青栁クリニックでは、まず丁寧な問診（いびき、無呼吸の指摘、日中の眠気の程度、既往歴、生活習慣など）と診察を行い、SASが疑われる患者様には、ご自宅で実施可能な簡易検査（睡眠ポリグラフィー）をご案内しております。

● 簡易検査：ご自宅にお持ち帰りいただける検査装置を使用いたします。就寝前に、指先に酸素飽和度センサー、胸に呼吸センサーを装着していただき、一晩の呼吸の状態（気流、いびき音）、血液中の酸素飽和度、脈拍数などを記録します。これは主にSASのスクリーニング（ふるい分け）検査としての位置づけでございます。比較的簡便に行えるため、SASが疑われる場合の最初のステップとして有用です。この簡易検査の結果、AHIが一定以上の値を示し、中等症以上のSASが強く疑われる場合や、より詳細な睡眠状態の評価が必要と判断される場合には、精密検査であるポリソムノグラフィー（PSG）をお勧めすることがございます。
● 精密検査（ポリソムノグラフィー：PSG）：より詳細な情報を得るための検査であり、SASの確定診断や、より正確な重症度・タイプの判定には本検査が必要となります。簡易検査でSASが強く示唆された方が主な対象となります。睡眠中の脳波、眼球運動、頤筋（あごの筋肉）の筋電図、心電図、呼吸（鼻と口の気流、胸部と腹部の呼吸運動）、いびき音、体位、血液中の酸素飽和度、下肢の動きなどを同時に測定・記録いたします。これにより、無呼吸・低呼吸指数（AHI）だけでなく、睡眠の深さや質、睡眠中の覚醒反応、不整脈の有無などを総合的に評価することが可能となります。青栁クリニックでは、PSG検査がご自宅でできるようにしております。

CPAP療法など、睡眠時無呼吸症候群（SAS）の治療法

睡眠時無呼吸症候群（SAS）の治療法は、その重症度、タイプ、原因、そして患者様の状態を考慮して選択されます。青栁クリニックではCPAP慮法を提供しています。

● 経鼻的持続陽圧呼吸療法（CPAP：シーパップ療法）：閉塞性睡眠時無呼吸症候群（OSAS）に対する最も標準的で有効な治療法とされております。睡眠時に鼻に装着したマスクから、特殊な装置によって一定の圧力をかけた空気を気道に送り込むことで、睡眠中に喉が塞がってしまうのを防ぎ、無呼吸や低呼吸を効果的に減少させます。特に、AHIが20回以上の中等症から重症のOSAS患者さんに高い治療効果が期待できます。CPAP療法を適切に使用することで、装着したその日からいびきや無呼吸が軽減され、日中の眠気や倦怠感の改善、睡眠の質の向上、さらには高血圧の改善など、多くの効果が報告されております。また、長期的には心筋梗塞や脳卒中といった心血管系合併症のリスクを大幅に低減させることも示されております。青栁クリニックでは、CPAP療法の導入から、マスクの選択やフィッティング、適切な圧力設定、定期的な使用状況の確認とフォローアップまで、患者様が安心して治療を継続できるよう、きめ細やかにサポートいたします。
● 生活習慣の改善：特に軽症のOSASの場合や、CPAP療法の補助として非常に重要です。
- ○ 減量：肥満はOSASの大きな原因の一つです。適切な食事療法と運動療法による減量は、気道の狭窄を改善し、SASの症状を軽減させる効果が期待できます。
- ○ 禁煙：喫煙は気道の炎症を引き起こし、SASを悪化させる可能性があります。
- ○ 節酒：就寝前のアルコール摂取は、喉の筋肉を弛緩させ、気道を狭窄しやすくするため控えることが推奨されます。
- ○ 睡眠時の体位の工夫：横向きに寝ることで、舌根沈下を防ぎ、気道の閉塞を軽減できる場合があります。

睡眠時無呼吸症候群（SAS）を放置することは、日中の眠気による生活の質の低下のみならず、高血圧、糖尿病、心血管疾患、脳卒中といった命に関わる重篤な合併症のリスクを高めます。ご自身やご家族のいびき、睡眠中の呼吸停止、日中の強い眠気など、SASを疑うサインがございましたら、決して放置なさらず、お早めにご相談ください。