診療案内 狭心症

狭心症(胸の痛み・圧迫感)でお悩みの方へ

「階段を上ったり、急ぎ足で歩いたりした時に、胸が締め付けられるように痛む」 「胸の中央あたりに圧迫感や重苦しさを感じるが、しばらく休むと治まる」 「この胸の痛みは、もしかして心臓の病気なのでは…」

このような胸の症状にお悩みではありませんか? それは、心臓が酸素不足に陥っていることを知らせる「狭心症」のサインかもしれません。

狭心症は、より重篤な心筋梗塞の前段階とも言える重要な病気であり、放置せずに原因を正しく理解し、適切な治療を受けることが大切です。

狭心症とは?

狭心症とは、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠動脈(かんどうみゃく)という血管が、主に動脈硬化によって狭くなり、心臓が必要とする酸素を十分に供給できなくなることで起こる病気です。

運動や興奮などによって心臓が多くの働きをすると、それだけ多くの酸素が必要になります。しかし、血管が狭くなっていると、需要の増加に対応できず、心筋が一時的な酸素不足(虚血)に陥ります。この時に現れる胸の痛みや圧迫感が、狭心症の主な症状です。

多くの場合、安静にすることで心臓の仕事量が減り、酸素の需要と供給のバランスがとれるようになると、症状は数分で治まります。

狭心症の種類

狭心症には、主に3つのタイプがあります。
  • 1. 労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)

    最も一般的な種類です。階段の上り下り、重い荷物を持つ、急ぎ足で歩くといった体を動かした時(労作時)に症状が現れます。通常、安静にすると数分~15分程度で症状が治まるのが特徴です。

  • 2. 不安定狭心症

    心筋梗塞に移行する危険性が非常に高い、緊急性の高い状態です。これまでより軽い労作で症状が出たり、安静にしていても症状が出たり、発作の頻度や持続時間が増加したりします。すぐに医療機関を受診する必要があります。

  • 3. 冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)

    冠動脈が動脈硬化で狭くなっているのではなく、血管自体がけいれん(攣縮)して一時的に細くなることで起こるタイプです。日本人(特に喫煙者)に多いとされ、安静時、特に夜間から早朝にかけて症状が出やすいのが特徴です。

狭心症の症状 ― こんなサインに注意

  • ● 典型的な症状
    • ○ 胸の痛み・圧迫感:「締め付けられる」「押さえつけられる」「重苦しい」といった表現をされることが多いです。
    • ○ 場所:胸の中央から左側にかけて感じることが多いです。
    • ○ 放散痛:痛みが左肩、腕の内側、あご、歯、のど、背中などに広がることがあります。
  • ● 非典型的な症状
    特に高齢者や糖尿病の患者さんでは、はっきりとした胸痛ではなく、「胃の不快感」「息切れ」「吐き気」といった症状で現れることもあり、注意が必要です。

心筋梗塞との違い

狭心症と心筋梗塞は、どちらも冠動脈の問題で起こりますが、緊急性や重症度が大きく異なります。

狭心症(労作性) 心筋梗塞
血流の状態 血流が悪い(狭窄) 血流が完全に途絶(閉塞)
血管の状態 一時的な酸素不足(虚血) 筋肉が死んでしまう(壊死)
痛みの持続時間 通常数分~15分以内 30分以上続く激痛
安静時の効果 安静にすると治まる 安静にしても治まらない

心筋梗塞が疑われる場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。

狭心症の危険因子

狭心症の根本原因である動脈硬化は、主に以下の生活習慣病や生活習慣によって進行します。
  • ● 高血圧
  • ● 脂質異常症(高コレステロール・高中性脂肪)
  • ● 糖尿病
  • ● 喫煙
  • ● 肥満、メタボリックシンドローム
  • ● 家族歴(血縁者に心臓病の人がいる)
  • ● 加齢
  • ● 睡眠時無呼吸症候群

病院ではどんな検査をするの?

狭心症が疑われる場合、以下のような検査を組み合わせて診断します。
  • ● 問診:どのような時に、どんな胸痛が、どのくらい続くかなど、症状の詳しい状況を丁寧にお伺いします。
  • ● 心電図検査:発作が起きていない安静時の心電図は正常なことも多いです。
  • ● ホルター心電図(24時間心電図):日常生活の中での心電図を記録し、特に冠攣縮性狭心症が疑われる場合に有用です。
  • ● 心エコー(心臓超音波)検査:心臓の壁の動きやポンプ機能、弁の状態などを評価します。
  • ● 血液検査:心筋梗塞発症の有無、危険因子である糖尿病や脂質異常症の状態把握をおこないます。

より精密な診断が必要な場合は、冠動脈CTや心臓カテーテル検査が可能な高度医療機関へご紹介します。

狭心症の治療

治療の目的は、症状をコントロールし、心筋梗塞への進行を防ぐことです。
  • ● 生活習慣の改善 :治療の基本です。禁煙、食事療法(減塩・低脂肪食)、適度な運動、体重管理などを行います。
  • ● 薬物療法
    • ○ 発作を止める薬:ニトログリセリン(舌下錠やスプレー)
    • ○ 発作を予防する薬:血管を広げる薬(カルシウム拮抗薬など)、心臓の負担を減らす薬(β遮断薬など)、血栓を防ぐ薬(抗血小板薬)、動脈硬化の進行を抑える薬(スタチンなど)
  • ● カテーテル治療(PCI) :手首や足の付け根から細い管を入れ、風船やステント(金属の網)で狭くなった血管を広げます。
  • ● バイパス手術(CABG) :狭くなった血管の先に、体の他の部分の血管をつなぎ、新しい血液の通り道を作ります。

当クリニックでは、胸の痛みや圧迫感といった症状で来院された患者さんに対して、狭心症や心筋梗塞といった危険な心臓病を見逃さないことを最優先に、迅速な初期診療を行います。
丁寧な問診と診察、心電図や心エコー、血液検査などを通じて診断を行い、薬物治療や生活習慣の改善を指導いたします。

胸の症状は、心臓からの重要な警告です。自己判断で様子を見ず、ぜひお早めにご相談ください。

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